講演者宮田 章裕 氏(日本大学)
講演日2023年2月24日13:45~15:15
私は、自他の「弱さ」と向き合って研究テーマを見つけてきました。研究者として駆け出しの頃は意図せずそうしていましたが、近年では意図的にそのようにしています。ただし、同じ「弱さ」という言葉でも、自他の場合で多少捉え方が異なります。
「自分の弱さ」の場合は、まさに私自身が抱える弱さを意識し、それを活かして研究テーマを見つけてきました。私生活のシーンでは、私は外向性が低く、他人に自分の考えを知られたり、他人と必要以上に関わったりすることをあまり得意としていません。この性格特性を研究テーマ選定時の着眼に活かし、繊細なユーザ心理を考慮したコミュニケーション支援システムなどに取り組んできました。
一方、「他者の弱さ」の場合は、障害者や高齢者、コンピュータ操作に不慣れな人が弱いと捉えるのではなく、彼らを相対的に弱い立場にしている社会、環境、システムに弱さがあると捉えるスタンスで研究テーマを設定してきました。障害学における社会モデルに近い考え方です。具体的には、ユーザの能力を直接的に高めたり拡張したりするのではなく、社会・環境・システム側からユーザに寄り添っていくアプローチで、コンピュータ操作や屋外移動を円滑にするためのシステムに取り組んできました。
今回いただいた貴重な講演の機会では、日常生活や研究活動の中で目を背けがちな「弱さ」に目を向け、私のこれまでの研究活動をご紹介し、これからの社会に求められる技術について問題提起をしたいと思います。