投稿日:2016年3月2日 / 更新日:2016年3月2日


○日本デジタルゲーム学会賞:

細井 浩一 氏(現職 立命館大学 映像学部 教授)

 受賞理由:

 細井浩一氏は立命館大学政策科学部において、モバイル通信とコンテンツを活用した地域振興プログラムなど文理融合型の産学公地連携プロジェクトを推進し、その後、同大学映像学部の設立に関わり同学部教授を務めるかたわら、立命館大学アート・リサーチセンターおよびゲーム研究センターにおいて、ゲームアーカイブの構築と社会的活用の研究などを行っている。また、情報テクノロジーやメディアの革新が人間や組織の行動にどのような影響を及ぼすかというテーマにおいて、情報通信と放送をめぐる近年の大きな進歩と革新を意識した先端的なビジネスモデルを構築し、それを実践していくための研究プロジェクトも数多く推進している。

 そして、ゲームアーカイブの構築と社会的活用に関する活動としては、「メディア芸術デジタルアーカイブ構築事業(ゲーム分野)」(文化庁)、「ゲームアーカイブの構築と活用についての研究」(京都府産学公連携)などがあり、デジタルゲームの文化的な背景、プレイヤーの評価や感覚なども同時にアーカイブ化する方法や、知的財産権保護のためのデータベース設計、国際的なゲームアーカイブのネットワーク構築など、若手研究者の指導育成などを通じて、ゲーム保存と利活用の方法論を構築してきた功績は高く評価されるべきである。

 また、細井氏は本学会の創設時より副会長として学会組織化に尽力され、2010年12月より会長を務めており、学会の発展に尽力してきた。とりわけ、「年次大会」の国内巡回開催の定例化、「夏期研究発表大会」と「国際日本ゲーム研究カンファレンス(International Conference on Japan Game Studies)」を定例化し、学会主催の研究発表大会を三本柱にするとともに、積極的な国際化を進めるなど、国内外のデジタルゲーム学の発展に大きく寄与され多大な貢献をされたと認められる。

 以上の通り、細井浩一氏を日本デジタルゲーム学会賞にふさわしい受賞者と判断し、ここに推薦するものである。

主要業績:

【論文】
(1)「オンラインゲームのアーカイブ構築に関する基礎的研究」『アート・リサーチ』Vol.14、2015 年3 月、共著
(2)「大学アーカイブズの応用研究」『立命館百年史紀要』第20 号、2012 年3 月、共著
(3)「デジタルゲームのアーカイブについて〜国際的な動向とその本質的な課題〜」国立国会図書館『カレントアウェアネス』No.304、2010 年6 月、単著
(4)「情報通信技術の社会化とデジタルゲーム」『立命館経営学』第45 巻第4 号、2006 年11 月、単著
(5)”Possibility and Prospect of Online Game in Asia”,Gaming,Simulations,and Society, Springer, Oct.2004.
他、多数。

【著書】
(1)『アーカイブ立国宣言』ポット出版、2014 年11 月、共著
(2)『ファミコンとその時代』NTT 出版、2013 年7 月、共著
(3)『デジタル・ヒューマニティー研究とWeb技術』ナカニシヤ出版、2012年3月、共著
(4)『コーポレート・パワーの理論と実際』同文舘出版、2006 年4 月、単著
(5)『政策科学の基礎とアプローチ』ミネルヴァ書房、2004 年5 月、共著
他、多数。

 

○日本デジタルゲーム学会若手奨励賞:

尾鼻 崇 氏(中部大学 助教)

受賞理由:

 尾鼻崇氏は、人文学系ゲーム研究の分野において、ゲームサウンド・ゲームオーディオを主たる対象として、歴史学・技術論・時間論といった視座に基づく研究を通し、ゲームサウンド・スタディーズの確立を目指す研究者である。近年の研究報告である「ゲームオーディオ研究のパースペクティブ」は、音楽学諸領域、フィルムスタディーズ、メディア・アート研究、美学・感性学といった複合的な研究基盤に基づき、ゲームオーディオをノンリニア性、テクノロジー、「プレイ」による多重性といった特性について実証的に検証しようという野心的な研究である。

 以上の通り、尾鼻崇氏は多大な研究業績を有し、本学会年次大会・夏季大会においても多くの研究報告を行うなど本学会の研究活動にも多大な貢献をし、さらには野心的な研究展望を有する今後の活躍が期待できる人物であると認められ、日本デジタルゲーム学会賞・若手奨励賞にふさわしいと判断しここに推薦するものである。

主要業績:

【論文】
(1)尾鼻崇, 上村雅之「ゲームオーディオへの「時間論」的アプローチ」, 『立命館映像学』第6号, pp.7-18, 2013年3月
(2)尾鼻崇「GAME&WATCH」のビデオゲーム史的視座―ルール・サウンド・インターフェイス」, 『コア・エシックス』第8号,pp.87-100, 2012年3月
(3)尾鼻崇, 上村雅之「『スーパーマリオ』の音楽論―ゲームサウンド・スタディーズのための試論として」, 『立命館映像学』第4号,pp.7-18, 2011年3月
(4)尾鼻 崇 『キングコング』の映画音楽にみられる「異国」表現 (民族藝術学の諸相),民族芸術 24, 138-144, 民族芸術学会, 2008年
他、多数。

【研究報告】
(1)尾鼻崇「ゲームオーディオ研究のパースペクティブ」 日本デジタルゲーム学会2015年夏季研究発表大会, pp88-90, 日本大学 2015年8月
(2)尾鼻崇「ゲームオーディオ研究の境界―映画音楽研究からのアプローチ」, 日本デジタルゲーム学会 第5回大会, 宮城大学, 2015年3月
(3)尾鼻崇「映像音楽にみる「ハリウッド式モティーフ」の発展的可能性」, 中部大学国際人間学研究科若手教員による研究発表会,中部大学人文学部大会議室, 2014年10月
(4)尾鼻崇「ゲームオーディオは「ゲームプレイ」にどのように影響するのか」, 日本デジタルゲーム学会 第4回大会, はこだて未来大学, 2014年3月
他、多数。

 

松永 伸司 氏(立命館大学 客員研究員)

受賞理由:

 松永伸司氏は、デジタルゲーム研究における日本の人文研究者としては、最前線にいる人物で、松永氏の博士論文『ビデオゲームにおける意味作用』は分析美学の知見のみならず、近年の世界的なデジタルゲーム研究の様々な知見のうえに拠って立ちつつ、デジタルゲームに関わる様々な要素を、極めて明晰に概念化したものである。これは、現在の日本のデジタルゲームに関する人文研究としては、最高峰のものと言える。また、現在の産業界へのインパクトという意味でも、近年GDC-CEDEC経由で大きく取り上げられた「ナラティヴ」をめぐる議論についても専門家の立場から積極的な発言を続け、一定の認知を得ている。海外との研究の接続という点では、現在、松永氏は、JesperJuul氏と連絡をとり、Juul氏の代表作である『Half Real』の翻訳に取り組むなど、人文分野において極めて重要な研究活動に関わっている。

 以上の通り、松永伸司氏は、人文分野の研究を積極的に行い学会活動にも多大な貢献をし、広範囲な研究領域を展望する今後の活躍が期待できる人物であると認められ、日本デジタルゲーム学会賞・若手奨励賞にふさわしいと判断しここに推薦するものである。

主要業績:

【論文】
(1)松永伸司「ビデオゲームにおける意味作用」東京藝術大学大学院美術研究科博士学位論文,2014年3月
(2)松永伸司「ビデオゲームにおけるプレイヤーの虚構的行為」,美学 64(2) 97-108,2013年12月
(3)松永伸司「ビデオゲームは芸術か?」,カリスタ 19,27-55,2012年12月

【口頭発表】
(1) 松永伸司「ナラティブを分解する――ビデオゲームの物語論」立命大学先端総合学術研究科公開研究会「ゲームのナラティヴ/音楽のナラティヴ」立命館大学,2015年11月7日
(2) 松永伸司「行為のデザインとしてのゲーム――ゲームと遊びを再定義する」京都ゲームカンファレンス,京都,2014 年 3 月 8 日
(3) 松永伸司「インタラクティブなフィクションとしてのビデオゲーム」第 63回美学会全国大会,京都大学,2012年 10 月 6 日
(4) 松永伸司「ビデオゲームにおける時間」日本デジタルゲーム学会 2011 年次大会, 立命館大学,2012 年 2 月 26 日
(5) 松永伸司「ビデオゲームのゲームシステム空間」第 62 回美学会全国大会,東北大学,2011 年 10 月 16 日
(6) 松永伸司「ビデオゲームにおける二種類の意味」第 31 回日本記号学会,二松学舎大学, 2011 年 5 月 15 日

 

 

○日本デジタルゲーム学会学生大会奨励賞:

塚本 裕樹 氏(公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科)

タイトル:「映像エフェクトを用いた投球トレーニングシステム」

推薦理由:

 本論文は、投球トレーニングシステムにおいて、エフェクトの有無が実際のトレーニングに与える影響を、科学的根拠に基づき独自のシステムを開発した上で、適切に実証実験を行ない、エフェクトにより投球トレーニング効果が上がる可能性を示している。子供の現実問題解決においてビデオゲームのエフェクトが効果がある事を示した点が新規性、有用性とも高く、また論文の構成もしっかりとしている。これまでの研究の成果の積み上げを見て取れる研究である。さらなる研究の成果を期待したい。

共著者:
角 薫 氏(公立はこだて未来大学)

 

以上