我が国は、従来のものづくりの強みに加え、クールジャパンにしめされるように、デザイン、ファッションや音楽・映像、ゲームなど価値ある情報づくりを、産業の基盤に据えることで、経済・社会の活性化をめざし、グローバルな文化・産業展開を進めています。
今回、日本デジタルゲーム学会2012年度大会は、福岡で開催します。福岡は、アジアに隣接した都市であり、古来から遣唐使の経由地や日宋貿易の拠点としてアジアに向けて発展してきました。加えて、福岡は観光、食や文化、エンターテイメント、など多彩な、クールジャパンの魅力を持った都市であり、地理的、文化的ポテンシャルを生かしたアジアでの学術連携や産業展開が進行しています。
開催校である九州大学大学院芸術工学研究院は、九州芸術工科大学(1968-2003)が母体となっています。九州芸術工科大学は、技術と芸術との融合を標榜し、「技術の人間化」を建学の理念とした唯一の芸術工学を指向する国立大学でした。現在も本研究院はこの理念を継承しながら、高度なデジタルメディア文化に対応し、論理的思考と豊かな芸術的感性をともに備えた、高次のクリエータの育成を目指した教育を行っています。
福岡にはユニークなゲームや映像の制作会社が存在しています。福岡県、福岡市などの行政機関もコンテンツ振興を重要な戦略としてとらえており、産学官の強い連携を基盤に、極東アジアをも含めたコンテンツ産業文化クラスターの形成を目指しています。
開催期間中には、九州大学、福岡県、福岡市が中心となって進めている、福岡アジア美術館で開催される「2012アジアデジタルアート大賞」をはじめ、九州大学の「人環境適応研究実験施設」や「デジタル工房」など、先端コンテンツ創成に関する世界レベルの設備も公開する予定です。
今回の大会では、アジアを背景としたコンテンツ創成・地域の魅力のグローバルな発信をデジタルゲームという視点で論議されることを期待します。皆様のご来福を心よりお待ちしています。
源田悦夫(日本デジタルゲーム学会2012年次大会実行委員長、九州大学大学院芸術工学研究院教授)