投稿日:2017年9月17日 / 更新日:2018年1月23日


日本デジタルゲーム学会会員の小林(七邊)信重と申します。9月7日~13日、科学技術融合振興財団(FOST)様から頂いた研究資金に基づいて、小山友介先生(芝浦工業大学)と田中絵麻研究員(マルチメディア振興センター)と共に、フィンランドのヘルシンキとタンペレに出張してきました。

この出張について、本学会の広報委員の皆様から「その内容を報告してはどうか」というご提案を頂きました。そこで、ヘルシンキとタンペレでの調査内容について、数回に分けてご報告させて頂きます。

まず初めに、今回の出張日程は主に次の通りでした。

9月07日(木) ヘルシンキ着
9月08日(金) アールト大学、ヘルシンキ・ゲーム・ファクトリー訪問
9月09日(土) タンペレ着
9月10日(日) Tracon参加
9月11日(月) タンペレ大学訪問
9月12日(火) ゲーム博物館
9月13日(水) 帰国

以上の活動のうち、今回は首都ヘルシンキでの調査についてご報告いたします。


9月8日朝、日本とフィンランドのゲーム産業の研究などをされているミーッカ・レヒトネンさんと打ち合わせをするため、私たちはアールト大学に向かいました。ミーッカさんとは、彼が東京大学の特任教員をされていた頃にフィンランド大使館経由で小林(七邊)のレポートを読まれたことをきっかけに、交流させて頂くようになりました。ミーッカさんはフィンランドと日本のゲーム・音楽産業に関する著作を出版されていますが、現在はアールト大学のIDBM(International Design Business Management)専攻の客員助教として、新しいイノベーション教育プロジェクトを立ち上げられています。

一方、私たちの研究グループは、現在、タンペレ大学の研究グループとも連携して、モバイルゲームや「ポケモンGO」をはじめとする位置情報ゲームのプレイヤーに関する統計調査を実施しています。この調査にミーッカさんにご協力頂いているということもあり、その中間報告をアールト大学で実施しました。小山先生が作成・報告されたスライドに基づいて、ミーッカさんや参加された学生さんと非常に刺激的な議論を行いました。なお、小山先生は、来年度、サバティカル制度を利用してアールト大学に滞在される予定です。

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お昼には、小山先生のお知り合いでアールト大学に現在滞在されている徳丸宜穂先生(名古屋工業大学)とランチをご一緒し、フィンランドのイノベーション政策の特徴について伺うことができました。

その後、ミーッカさんのご紹介に基づいて、ヘルシンキ市やゲーム産業、大学を結ぶエコシステムを形成しようとしているヘルシンキ・ゲーム・ファクトリー(HGF)を訪れました。訪問のご相談を事前にしておらずアポなしでお伺いしたのですが、HGFのキーパーソンであるホセ(José Jácome)さんにお会いすることができました。

HGFは、もとはヘルシンキ市の病院施設で現在はスタートアップ用の建物(マリア01)を、国内外のゲーム会社に安価で貸し出そうとしている組織です。また、ゲーム産業、教育機関、ヘルシンキ市の間のコミュニティや、新しい才能・ビジネス・成功物語のための場所を創出し、さらにメディアやオーディエンスと繋がっていこうとしています。マリア01にはまだゲーム会社は入っておらず、室内はがらんとしていたのですが、これから数十の企業が入る予定とのことでした。HGFが仲介して形成される(かもしれない)ヘルシンキの産学官連携のエコシステムについては、引き続き注目していきたいと考えています。

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なお、ミーッカさんが書かれたヘルシンキのゲーム産業エコシステムやHGFに関する原稿「ヘルシンキ・ゲーム・ファクトリー――クリエイティブ産業の政策決定にアンダーグラウンドの活動はいかに貢献し得るかに関するケーススタディ」は、マルチメディア振興センターの研究報告書『ゲーム・アニメ産業におけるイノベーションと地域活性化に関する調査研究』に掲載予定です(オンラインでも読むことができます)。今しばらくお待ちください。

◆記事へのリンク
フィンランド訪問記(1) ヘルシンキ編
フィンランド訪問記(2) タンペレ編(1)
フィンランド訪問記(3) タンペレ編(2)
フィンランド訪問記(4) 謝辞と今後について